介護施設立ち上げで重要な要介護度・医療依存度の考え方

介護施設の立ち上げを検討する際、
「どのような利用者を受け入れるか」は、比較的早い段階で話題になります。
一方で、
- 要介護度はどの程度を想定するのか
- 医療依存度をどこまで受け入れるのか
といった点については、
- 「まずは開設してから考えよう」
- 「入居が決まってから調整すればいい」
と、後回しにされてしまうケースも少なくありません。
しかし実際には、
要介護度・医療依存度の設定は、介護施設運営の難易度そのものを決める前提条件です。
この前提を曖昧にしたまま立ち上げを進めると、
施設運営は想像以上に苦しいものになっていきます。
この記事では、要介護度・医療依存度の設定が、
- 収入構造
- 人員配置
- オペレーション
- 組織風土
にまで、どのように影響していくのかを、経営・現場の両面から整理していきます。
要介護度・医療依存度は後から調整できない前提条件
要介護度や医療依存度は、
単に「利用者の属性」を示すものではありません。
- 人員配置
- 業務量
- 記録・情報管理
- 収入構造
といった、施設運営の根幹に直結します。
立ち上げ後に多少の調整はできたとしても、前提そのものを大きく変えることは簡単ではありません。
要介護度の設定は施設の収入構造に直結する
まず影響を受けるのが、施設の収入構造です。
平均要介護度がどの水準になるかによって、
- 介護報酬の水準
- 月次の売上規模
- 想定できる人件費総額
は、立ち上げの段階でほぼ決まってしまいます。
想定よりも要介護度が低い状態が続くと、
- 売上が伸びない
- 人件費を十分にかけられない
- 結果として現場の負担が増す
といった悪循環に陥るケースも少なくありません。
要介護度・医療依存度の設定は、収入や人員配置だけでなく、オペレーションや組織風土へと段階的に影響が広がっていきます。
要介護度・医療依存度は人員配置・体制に大きく影響する
要介護度・医療依存度は、
必要な人員配置数や体制にも直接影響します。
想定よりも重度の利用者が増えれば、
- 必要な職員数が増える
- 夜勤・緊急対応の負荷が高まる
- 管理者・施設長の業務量が増える
といった状況が生じます。
一方で、低い要介護度を前提とした体制のままでは、こうした変化に耐えることができません。
「人が足りない」「現場が回らない」という問題の多くは、採用の失敗ではなく、前提条件の設定ミスが原因です。
要介護度が上がるとオペレーション回数と情報量も増える
要介護度や医療依存度が高くなると、
増えるのは身体的な介護負荷だけではありません。
- 介護・看護の対応回数が増える
- 記録すべき内容が増える
- 申し送りや情報共有の頻度が高くなる
といったように、
日々扱う情報量そのものが大きく増えていきます。
この前提を想定せずに立ち上げを行うと、
- 記録が追いつかない
- 情報共有が属人的になる
- 小さな抜け漏れがトラブルにつながる
といった問題が起こりやすくなります。
要介護度・医療依存度の設定は、どのレベルの情報管理体制が必要になるのかという点にも直結しています。
「ぬるま湯」の運営が後から大きな壁になることもある
もう一つ、見落とされがちですが、非常に重要なのが組織風土への影響です。
低い要介護度を前提とした、比較的負荷の低い運営に慣れてしまうと、
- その業務量が「当たり前」になる
- 余裕のある状態が基準になる
- 変化を嫌う組織風土がつくられる
といった状態が生まれやすくなります。
その後、要介護度や医療依存度を引き上げようとした際に、
- 「聞いていた話と違う」
- 「急に大変になった」
- 「やり方を変えたくない」
といった不満や反発が生じ、組織として足並みが揃わなくなるケースも少なくありません。
要介護度を定めることは受け入れを制限することではない
ここで、一つ整理しておきたい前提があります。
介護施設が、あらかじめ想定する要介護度や医療依存度を定めることは、利用者を選別したり、排除したりするためのものではありません。
この施設は、このような方の、このようなニーズに応えるために、必要な人員配置と設備を備えて立ち上げているという前提を、明確にしているにすぎません。
もし、この前提を大きく外れた受け入れを続けてしまえば、
- 人員配置が追いつかない
- 安全なケアが提供できない
- 現場が疲弊し、離職が続く
といった事態を招き、結果として施設運営そのものが立ち行かなくなる恐れがあります。
基準を設けることは社会的ニーズに応え続けるための選択
要介護度や医療依存度の基準を設けることは、「誰かを断るため」ではありません。
社会の中に存在する多様なニーズに対して、自分たちはどこを担うのかを明確にする行為です。
すべての施設が、すべてのニーズに応えることはできません。
だからこそ、
- 自分たちが担う役割
- 責任を持てる範囲
を明確にすることが、結果として地域全体の介護体制を支えることにつながります。
よくある間違った考え方
実際の立ち上げ現場では、次のような考え方が見られます。
- 最初は軽めで、後から重度にすればいい
- 入居が決まってから体制を整えればいい
- 人が集まってから考えればいい
しかし、これらは後から大きな歪みを生みやすい考え方です。
では、どう考えるべきか
重要なのは、最初から完璧な答えを出すことではありません。
- どの水準を目指すのか
- どこまではやるのか
- どこからはやらないのか
こうした前提条件を、言語化し、共有できる形にしておくことが重要です。
要介護度・医療依存度の設定は、
- 人
- オペレーション
- 情報管理
- 組織風土
へと、連鎖的につながっていきます。
まとめ|要介護度・医療依存度は施設運営の前提を決める
要介護度・医療依存度の設定は、
- 必要となる人材の専門性や人数
- 現場で求められる業務負荷の水準
- 組織として維持できるオペレーションの形
- スタッフが働き続けられる組織風土
といった、介護施設運営を長く続けるための土台そのものを左右します。
もちろん、結果として収入構造や費用にも影響しますが、本質は「数字」ではありません。
どのような人材を、どの体制で確保し、無理のない形で組織を維持し続けられるのか。この視点を欠いたままでは、どれだけ立地や制度条件が良くても、施設運営はいずれ行き詰まってしまいます。
だからこそ、「まずは開設してから考える」のではなく、立ち上げの最初の段階で前提を定めることが不可欠なのです。
私たちは、開設後も安定した運営を続けられる組織づくりを大切にし、立ち上げの段階から、こうした前提条件や判断軸を一つひとつ言語化しながら、事業運営全体を見渡す支援を行っています。
私たちは介護事業の立ち上げを
豊富な実績をもとに伴走支援しています。
不安や課題があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人

鈴木 隆広
介護・医療分野において、事業立上げから既存事業所の運営改善までを支援。
現場視点を大切にし、組織づくり・業務改善・IT活用を通じて、無理のない事業運営をサポートしている。
中小企業診断士/kintone認定アソシエイト
